グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」
誰もがきっと、小さなころに一度は読んでもらった事があるお話ではないでしょうか?
仲の良い男女のきょうだいが、森で迷子になってしまって、お菓子の家にたどりつくお話。
そしてそこで、悪い魔女につかまってしまうお話です。
こう聞くと、「そうそう、おぼえてる!」と思う人も多いはずですが、
それならば、このお話のラストは知っていますか?
きょうだいはどうやって魔女の家から逃げ出して、その後、どうなったのでしょうか?
小さなころの記憶とはとてもあいまいなものなので、
「なんとなくハッピーエンドになった気がする」
と漠然と記憶している人が多いのでは?
いい機会なので、この記事では、
グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」のあらすじとラストをわかりやすく説明しておきます。
また、ヘンゼルとグレーテルは、どちらが兄でどちらが妹なのか、
いや、そこは、本当に兄と妹だった?
もしかしたら、姉と弟だったんじゃない?
そんなぼんやりとした疑問も一緒に解決していきましょう。
ヘンゼルとグレーテルは兄妹?姉弟?
結論から言うと、兄と妹、もしくは姉と弟というそれぞれの説は、どちらも正解です。
というのも、この2人のきょうだいの関係は、原作でもはっきりと定められていないようなのです。
確かなのは、以下の3点です。
- ヘンゼルは男の子
- グレーテルは女の子
- ヘンゼルとグレーテルの関係は「きょうだい」
もう少し分かりやすく言うと、
日本では、女のきょうだいを「姉」と「妹」、男のきょうだいを「兄」「弟」というように、分ける言葉が存在しますが、
英語では「姉」も「妹」もsister(シスター)、「兄」の事も「弟」の事もbrother(ブラザー)と呼びますよね。
なので、『グレーテルはシスターだよ』と書いてあるものを、姉だと理解するか、妹と理解するかで分かれるだけであって、どちらも間違いではないのです。
これは国民性の違いにも通じるもので、
日本人は年齢というものをとても大切にするので、たとえきょうだいであっても、自分より年上なら尊敬する、年下なら一歩下がると考えます。
「長男が後を継ぐ」とかも、まさにその象徴です。
ですが海外(英語圏)の人たちは、「同じ血を分けたきょうだい」というかたちでとらえるので、性別こそ区別はしますが、自分よりも上だの下だのと、生まれた順番などは大した問題ではなく、それによって呼び方を変えたりはしないのでしょうね。
・・・だとしたら、なぜ、多くの人は、グレーテルを「姉」ではなく「妹」だと思っているのでしょう?
その疑問は、ヘンゼルとグレーテルのあらすじを理解する事でみえてくるものがあります。
ヘンゼルとグレーテルのラストとあらすじは?
ここではまず、ヘンゼルとグレーテルのあらすじについて、簡単に説明しておきますね。
興味を持ったら絵本を読み直してみるのもいいかもしれませんが、なにぶん、「ヘンゼルとグレーテル」は、グリム童話の中でも名作中の名作なもので、絵本の種類もいっぱいです。
私が読みやすいな、と感じたものはこちらの絵本ですが、自分であれこれ探してみるのも楽しいかもしれませんよ。
【第1部】
大きな森のちかくに、お父さん、お母さん(継母)、ヘンゼル、グレーテルが住んでいました。
このお家はとてもまずしかったので、お母さんが「子供たちを森に捨てよう」と言いました。
ヘンゼルは森に置き去りにされてもおうちに帰れるように、帰りみちの目印に、小石をおいておきました。
そうして、ヘンゼルとグレーテルは無事におうちに帰ることができました。
【第2部】
もういちど、お母さんは子供たちを森に捨てることにしました。
急だったので、こんどは、小石を用意できなかったヘンゼルとグレーテルは、帰りみちがわからなくなってしまいました。
そんなとき、森の中にお菓子の家をみつけたので喜んで食べているとそれは魔女の家でした。
魔女はヘンゼルを食べようとしますが、やせていて美味しそうではありません。
グレーテルにごちそうを作らせて、それをヘンゼルに食べさせて、太らせてから食べようと考えます。
ヘンゼルは小屋に1人で閉じ込められ、グレーテルは魔女の台所で働くことになりました。
【第3部】
グレーテルが作るごちそうを毎日食べさせても、ヘンゼルはなかなか太りません。
我慢ができなくなった魔女は、もう食べてしまおうと、火がついたかまどを用意します。
魔女がかまどの火を確認していたので、いまだ!とグレーテルは魔女の背中をおして、かまどに閉じ込めると、魔女はそのまま燃えてしまいました。
グレーテルは、ヘンゼルを小屋の中から助け出して、家に帰ろうとまた2人で歩き出します。
【第4部】
家に帰る途中に、大きな川がありました。
「橋がないからわたれない」というヘンゼルに、「カモに助けてもらおう」と提案するグレーテル。
「一緒にカモのせなかにのろう」というヘンゼルに、「カモが困ってしまうからひとりずつにしましょう」と言うグレーテル。
困難をのりこえて家にたどりつくと、お母さんは死んでいて、お父さんは反省していました。
その後、3人で仲良く暮らしました。
【考察】
いかがでしょうか?
「そんな場面があったんだ!」という新しい発見もあったのではないでしょうか?
以上のあらすじから、読み手が、きょうだいのどちらがしっかりしていて、どちらが甘えん坊だったのか、
どちらを上で、どちらを下だと思ったのか、ここが興味深いところなのです。
私はそもそも、ヘンゼルがお兄ちゃん、グレーテルが妹だと思っていました。
おそらく、子供の頃に読んだ絵本がそうなっていたんでしょうね。
という事は、グリム童話を日本の絵本として最初に翻訳した人が、このストーリーを読んで、
- ヘンゼル=兄
- グレーテル=妹
と理解したのだと思います。
ですが、海外の翻訳では、
- ヘンゼル=弟
- グレーテル=姉
となっている場合もあります。
この考え方も、上のあらすじを読み直してみると、じゅうぶん理解出来ます。
結果的に、魔女をたおして、家までの帰りみちを切り開いたのはグレーテルの努力が大きかったようにも読み取れます。
しっかりもののお姉ちゃん、と理解した翻訳家がいても何も不思議ではありません。
また、このお母さんについても、最初は本当のお母さんだったけど、途中から継母(ままはは)に変わったという説もあり、どちらでおぼえていても間違いではありません。
最終的には亡くなってしまうので(飢餓という説が有力ですが、はっきりとした死因は不明)、継母ということにして、お母さんが死んでしまう悲しさを、子供目線でやわらげようとしているのかも?
そして、このあらすじから みえてくる事がもうひとつ。
NHKで毎週月曜日の夜に放送している「グレーテルのかまど」
あれって、お菓子を作っているのはヘンゼルの方なのに、どうして番組名は「グレーテルのかまど」なの?
こんな疑問を、私はずっと抱いていたのですが・・・
これって、「かまど」に関わりのあるほうが、ヘンゼルではなくグレーテルの方だったから、ではないでしょうか?
- 魔女の台所で毎日ごちそうを作っていたのはグレーテル
- 魔女をかまどでやっつけたのもグレーテル
それゆえに、あの番組は「グレーテルのかまど」と名付けられたのでは・・・?
あくまでも推測ですが、少しだけスッキリした気分です。
そして、あの番組の中でもグレーテルは「妹」ではなく「姉」の扱いですよね。
どちらも間違っていないので、どちらも正解です。
なんなら、上記の考察は一切関係なくて、15代目ヘンゼルである瀬戸康史さんがなんとなく弟キャラっぽいので、なんとなくヘンゼルを姉にしただけかもしれないしね!
【参考記事】
⇒ グレーテルのかまどの歴代ヘンゼルは?レシピ本や動画・再放送まで!
まとめ
- ヘンゼルとグレーテルは、兄妹でもあり、姉弟でもある
- 母親も、本当のお母さんでもあり、継母でもある
- 「グレーテルのかまど」が「ヘンゼルのかまど」じゃない理由はあらすじに関係あり?
読み込めば読み込むほど面白い「ヘンゼルとグレーテル」ですが、この記事で、もやもやしていた謎が少しでもスッキリしてくれたとしたら嬉しいです。
グリム童話自体、何度も何度も編集されているのに、そこからさらにいろんな国に渡り、その国の国民性や価値観で翻訳されて、それがまた子供たちに読み継がれることによって語り継がれていくので、もうこれは最終地点が多すぎるんですよね。
ゴールのパターンありすぎ問題ですよ。
でも、そんなところが、物語や絵本の良さでもあるのかな。
またこうして、気になる絵本を深堀出来たらいいな!
長い考察を最後までお読みいただき、ありがとうございました!